はじめに|事業計画書で融資の通りやすさは変わる
飲食店を開業したいと思っても、 多くの方が最初につまずくのが 「事業計画書をどう書けばいいのか分からない」 という点です。
日本政策金融公庫などで創業融資を受ける場合も、 事業計画書の内容次第で、審査での見え方は大きく変わります。
ただし、難しく考えすぎる必要はありません。 飲食店の事業計画書で見られているのは、 文章のうまさではなく「この計画で本当にお店を続けられそうか」という実現可能性 です。
本記事では、
- 飲食店の事業計画書とは何か
- 何を書けばよいのか
- 売上予測・資金計画の考え方
- 融資審査で見られやすいポイント
- よくある失敗
を、開業初心者にも分かるように整理して解説します。
なお、開業全体の流れから整理したい方は、
飲食店開業の完全ガイド を先に読むのがおすすめです。
結論|飲食店の事業計画書で最も重要なのは「数字の整合性」と「実現可能性」
先に結論を言うと、 飲食店の事業計画書で最も重要なのは次の5点です。
- どんな店を、誰に向けてやるのかが明確であること
- 売上予測に根拠があること
- 原価・人件費・家賃などの支出計画が現実的であること
- 開業資金と運転資金が不足していないこと
- 借入後に返済できる見通しがあること
つまり、 見られているのは「夢があるか」だけではなく、 数字として無理のない計画になっているか です。
「気合い」や「熱意」は大切ですが、 融資や開業準備では、それを支える根拠が必要です。
飲食店の事業計画書とは?
飲食店の事業計画書とは、 どんな店を、どこで、誰に、どうやって提供し、いくら売り、いくら利益を残すのか を整理した書類です。
特に創業融資の場面では、 次のような観点を相手に伝える役割があります。
- この人は本当に開業準備ができているか
- 売上計画は現実的か
- お金の使い方は妥当か
- 借りたお金を返済できそうか
つまり、事業計画書は単なる提出書類ではなく、 自分の開業計画を数字で点検するための設計図 でもあります。
飲食店の事業計画書で必ず整理すべき5項目
飲食店の事業計画書では、最低でも次の5項目を整理しておく必要があります。
1. どんな店をやるのか
まず必要なのは、店の全体像です。
- 業態(カフェ、居酒屋、ラーメン店など)
- 提供する商品やサービス
- コンセプト
- 想定する客層
- 出店エリア
ここが曖昧だと、 以降の売上予測や必要資金もすべて曖昧になります。
大事なのは、 「誰に、何を、どんな価値として提供するのか」 を言語化することです。
2. 誰に売るのか
次に、想定顧客を明確にします。
たとえば、
- オフィス街のランチ需要なのか
- 住宅街のファミリー需要なのか
- 夜の会食需要なのか
- 1人客中心なのか
によって、 必要な席数、客単価、営業時間、メニュー構成は変わります。
事業計画書では、 「誰が来る想定なのか」 を具体的に書くことが重要です。
3. いくら売るのか
ここで必要になるのが売上予測です。
売上は感覚ではなく、 次のように分解して考えます。
売上 = 客単価 × 来客数
さらに飲食店では、
売上 = 客単価 × 回転率 × 席数 × 営業日数
という形で考えると、根拠を作りやすくなります。
売上予測の根拠が弱いと、 事業計画書全体の信頼性が一気に落ちます。
売上設計の全体像から整理したい方は、
飲食店の売上を上げる方法|売上最大化の完全ガイド も参考になります。
4. いくらかかるのか
売上だけでなく、支出計画も必要です。
主に確認すべきなのは以下です。
- 食材原価
- 人件費
- 家賃
- 水道光熱費
- 広告宣伝費
- 通信費やサブスク費用
- 借入返済額
ここで重要なのは、 「開業できるか」ではなく「継続できるか」 まで見ることです。
利益構造の基本を整理したい方は、
飲食店の利益が残らない本当の理由 もあわせて確認してみてください。
5. どうやって返済するのか
融資を受けるなら、 最後に必要なのが返済計画です。
- 毎月いくら返すのか
- その返済額を利益や資金繰りの中で吸収できるのか
- 売上が計画未達でも耐えられるのか
この視点がないと、 「借りられるか」は通っても、 「経営が続くか」で苦しくなります。
売上予測はどう作る?|飲食店の事業計画書で最も重要な数字
多くの人が悩むのが、売上予測の作り方です。
ですが、ゼロから難しく考える必要はありません。 飲食店の売上予測は、基本的に以下の順番で組み立てます。
1. 席数を決める
まずは、実際に何席あるのかを整理します。
- カウンター席
- 2名席
- 4名席
- テーブル構成
この席数が、来客数の上限を決めます。
2. 客単価を置く
次に、1人あたり平均でいくら使ってもらう想定なのかを置きます。
たとえば、
- ランチ:1,200円
- ディナー:3,500円
のように時間帯別に分けても構いません。
3. 回転率を置く
回転率は、 1つの席が1日に何回使われるかの目安です。
- カフェなら低め
- ラーメン店なら高め
- 居酒屋なら滞在時間を考慮
というように、業態に応じた現実的な数値にする必要があります。
回転率の考え方は、
飲食店の回転率改善・席効率向上の完全ガイド で詳しく解説しています。
4. 営業日数を掛ける
月に何日営業するのかを掛けます。
たとえば、
- 26日営業
- 休日は月4日
のように置くと、月商の予測が作れます。
5. 楽観ケースではなく、現実ケースで置く
融資や事業計画書では、 売上を高く見せることよりも、 達成できそうな数字にすること が大切です。
開業直後は満席前提にならないことも多いため、 最初から強気に置きすぎないよう注意しましょう。
支出計画の作り方|利益が残るかどうかはここで決まる
売上予測が作れても、 支出計画が甘いと事業計画書は成立しません。
飲食店で最低限見ておきたい支出は以下です。
主な支出項目
- 原価
- 人件費
- 家賃
- 水道光熱費
- 消耗品費
- 広告宣伝費
- 通信費
- システム利用料
- 借入返済額
特に見落としやすいポイント
運転資金を別で確保できているか
開業時は、初期費用だけを見てしまいがちですが、 実際には開業後の運転資金も必要です。
- 仕入れ
- 人件費
- 家賃
- 水道光熱費
など、毎月出ていくお金を考えると、 最低でも3〜6か月分の運転資金 は見ておきたいところです。
開業資金の全体像は、
飲食店を開業したいけど、実際にいくらお金がかかるんだろう? で詳しく整理しています。
家賃だけでなく固定費全体で見る
家賃は目立ちますが、 実際にはそれ以外の固定費も積み上がります。
- POS利用料
- 予約システム利用料
- 通信費
- リース料
- ゴミ処理費
こうした固定費を軽く見積もると、 開業後に想定より利益が残りません。
融資審査で見られやすいポイント
飲食店の創業融資では、 事業計画書の中でも特に次の点が見られやすいです。
1. 自己資金があるか
自己資金が多いほどよい、という単純な話ではありませんが、 自分でも準備している姿勢 は重要です。
また、自己資金がまったくない場合は、 資金計画全体の信頼性が弱く見られやすくなります。
2. 飲食業の経験があるか
飲食業の経験があると、 計画の実現可能性が高いと見られやすくなります。
未経験の場合でも、
- なぜこの業態なのか
- どのように不足部分を補うのか
- 誰と一緒に進めるのか
が説明できれば、見え方は変わります。
3. 数字に整合性があるか
ここは非常に重要です。
たとえば、
- 席数が少ないのに売上が大きすぎる
- 客単価とメニュー構成が合っていない
- 家賃に対して売上が低すぎる
- 原価率や人件費率が不自然
といった矛盾があると、 計画全体の信頼性が下がります。
黒字ラインの考え方を整理したい方は、
飲食店の損益分岐点の出し方|何人来れば黒字になる? も確認してみてください。
4. 売上未達でも耐えられるか
計画通りに売上が立たないことは珍しくありません。 そのため、融資では 「少し売上がズレても資金ショートしないか」 も見られます。
この視点を持てているかどうかで、 事業計画書の説得力は大きく変わります。
飲食店の事業計画書でよくある失敗
1. 売上予測が強気すぎる
最も多い失敗です。
- 開業初月から満席前提
- 高回転前提
- 客単価が高すぎる
など、希望ベースの数字になってしまうと、 全体の信頼性が落ちます。
2. 運転資金を入れていない
初期費用だけを並べて、 開業後のお金が抜けているケースもよくあります。
開業直後は売上が安定しない前提で考える必要があります。
3. コンセプトが抽象的すぎる
「地域に愛される店」 「居心地の良い空間」 だけでは不十分です。
- 誰に
- 何を
- どういう理由で選ばれるのか
まで具体化することが重要です。
4. 返済の視点が弱い
融資を受ける場合は、 借りることよりも返すことが重要です。
返済額を毎月の計画に落とし込めていないと、 現実の経営とのズレが大きくなります。
初心者向け|飲食店の事業計画書を作る順番
何から手をつければよいか分からない場合は、 次の順番で整理すると進めやすいです。
Step1. 店のコンセプトを決める
- 業態
- 客層
- 立地
- 提供価値
Step2. 必要資金を洗い出す
- 物件取得費
- 内装費
- 厨房設備費
- 開業準備費
- 運転資金
Step3. 売上予測を作る
- 席数
- 客単価
- 回転率
- 営業日数
Step4. 支出予測を作る
- 原価
- 人件費
- 家賃
- 固定費
- 返済額
Step5. 黒字ラインと返済可能性を確認する
この順番で作ると、 計画の抜け漏れが起きにくくなります。
よくある質問(FAQ)
Q1. 飲食店の事業計画書は未経験でも作れますか?
はい、作れます。
ただし、未経験の場合は
- なぜその業態を選ぶのか
- 経験不足をどう補うのか
- 数字の根拠をどう置くのか
をより丁寧に整理する必要があります。
Q2. 売上予測はどれくらい現実的に作るべきですか?
少し保守的なくらいがちょうどよい です。
融資では、派手な売上計画よりも、
達成可能性の高い計画のほうが信頼されやすくなります。
Q3. 事業計画書と創業計画書は違いますか?
厳密には提出先やフォーマットに違いがある場合がありますが、 実務上はどちらも 「事業の内容・売上・費用・資金計画を整理する書類」 として考えて問題ありません。
Q4. 自己資金はいくら必要ですか?
一概には言えませんが、
自己資金ゼロよりは、一定額を準備しているほうが望ましい です。
詳しくは、
飲食店を開業したいけど、実際にいくらお金がかかるんだろう?
も参考にしてください。
Q5. 事業計画書で一番大事なのは何ですか?
最も大事なのは、
数字に無理がなく、実際に経営が続きそうだと伝わること です。
特に、売上予測・支出計画・返済計画の整合性が重要です。
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まとめ|事業計画書は「提出書類」ではなく「開業計画の設計図」
飲食店の事業計画書で大切なのは、 見栄えの良い文章を書くことではありません。
- どんな店をやるのか
- 誰に売るのか
- いくら売るのか
- いくらかかるのか
- 借入後に返済できるのか
を、数字と一緒に整理することが重要です。
事業計画書がしっかり作れると、 融資審査のためだけでなく、 自分自身の開業計画の甘さにも気づけるようになります。
これから開業準備を進める方は、 まずは理想を書くのではなく、 続けられる計画になっているか という視点で整理してみてください。



