はじめに
飲食店を開業するうえで、どんなメニューをどの価格で提供するかは「お店の命」といえます。
同じ業態でも、メニュー構成や価格設定のバランスによって利益率は大きく変わります。
原価率だけを基準に価格を決めてしまうと、売れ筋と利益のバランスが崩れ、思うように利益が出ないことも。
この記事では、飲食店のメニュー設計・価格設定の考え方を基礎から整理し、実際に利益を出すためのポイントを紹介します。
1. メニュー設計の基本方針を決める
コンセプトとターゲットを軸に
メニューは「お店のコンセプト」と「想定客層」によって決まります。
例えば同じラーメン店でも、以下のように方向性が全く異なります。
| コンセプト | ターゲット | メニュー戦略 |
|---|---|---|
| 高級志向 | サラリーマン・グルメ層 | 単価1,000円超、限定メニュー重視 |
| ファスト志向 | 学生・ランチ層 | 単価700円前後、スピード提供 |
お店の軸がぶれるとメニュー構成も曖昧になります。まずは「どんなお客様に、どんな体験を届けたいか」を明確にしましょう。
2. メニュー構成を設計する
メニュー構成の考え方
メニュー設計では、「看板商品」と「利益を支える商品」のバランスが大切です。
| 役割 | 特徴 | 例 |
|---|---|---|
| 看板商品 | 集客力が高く、SNSで話題になりやすい | 特製ハンバーグ、名物ラーメン |
| 利益商品 | 原価率が低く利益が出やすい | ドリンク、サイドメニュー |
| 付加商品 | 客単価を引き上げる | セットメニュー、トッピング |
| 季節商品 | リピート促進・話題づくり | 季節限定パフェ、旬の魚定食 |
看板商品で集客し、利益商品で収益を支える構造を意識すると安定します。
3. 原価率と価格設定の基本
原価率とは?
原価率 = 仕入原価 ÷ 販売価格 × 100(%)
一般的な原価率の目安は以下の通りです。
| 業態 | 原価率の目安 |
|---|---|
| 居酒屋 | 30〜35% |
| 定食屋 | 35〜40% |
| カフェ | 25〜30% |
| ラーメン店 | 30〜35% |
| バー | 20〜25% |
原価率だけでは決めない
例えば「原価率30%」を目安にしても、客単価が低ければ利益は出ません。
「どのメニューがどのくらい売れるか」を踏まえて全体の利益構造を設計することが大切です。
4. メニュー価格設定の実例
例:カフェ業態の場合
1杯あたりのコーヒー豆原価が60円、販売価格を400円に設定した場合、原価率は15%。
ここでフードをセットにして客単価を上げることで、利益構造が安定します。
| メニュー | 原価 | 販売価格 | 原価率 |
|---|---|---|---|
| コーヒー単品 | ¥60 | ¥400 | 15% |
| ケーキセット | ¥250 | ¥850 | 29% |
「セット販売」や「ドリンク+α」構成を意識すると、自然に単価が上がります。
例:定食業態の場合
原価率を35%に設定しても、サイドメニューの利益でバランスを取ることができます。
| メニュー | 原価 | 販売価格 | 原価率 |
|---|---|---|---|
| メイン定食 | ¥350 | ¥1,000 | 35% |
| 小鉢・味噌汁 | ¥100 | ¥300 | 33% |
| ドリンク | ¥50 | ¥400 | 12% |
看板商品の定食は集客重視、サイドメニューやドリンクで利益確保。これが飲食店の基本構造です。
5. 客単価を上げる工夫
セットメニューを設ける
単品よりもセット販売で「ついで買い」を促進します。
トッピング・追加メニュー
カスタマイズ要素を設けることで、満足度も単価も向上。
コース・飲み放題設定
居酒屋や焼肉業態では、固定単価で注文単価を安定させるのが有効です。
6. 売れ筋分析とメニュー改定
開業後は売上データを分析して「よく出るメニュー」「利益の高いメニュー」を把握します。
メニューの構成比(メニューごとの売上割合)を定期的に見直すことで、利益の最適化が可能になります。
売上構成比分析の例
| メニュー | 売上構成比 | 原価率 | 利益貢献度 |
|---|---|---|---|
| 看板商品(A) | 40% | 35% | ◎ |
| サイド商品(B) | 30% | 20% | ◎ |
| 季節限定(C) | 10% | 45% | △ |
| ドリンク(D) | 20% | 15% | ◎ |
“売れているが利益が薄い”商品を見つけて改善することが、経営改善の第一歩です。
よくある質問(FAQ)
Q. 原価率は低いほどいいですか?
→ 一概にそうではありません。低すぎると「コスパが悪い」と感じられ、リピート率が下がります。
Q. メニュー数は多いほうがいいですか?
→ 開業初期は少なめ(10〜15品程度)が理想です。オペレーションが安定してから増やしましょう。
Q. 原価率が高くても提供したほうがいいメニューは?
→ 看板商品や限定メニューなど、集客に貢献するものは「広告費」と考えてOKです。
まとめ
飲食店のメニュー設計・価格設定は、「原価率」だけでなく「客単価」「売れ筋構成」「ブランドイメージ」など複数の要素で成り立っています。
- コンセプトとターゲットに合わせる
- 看板商品と利益商品のバランスを取る
- セットや追加メニューで単価を上げる
- 売上構成を定期的に見直す
数字を意識しながらも、「お客様がまた食べたい」と思う魅力的なメニュー設計が、長く続くお店づくりの鍵です。

